当研究科は、クラウドファンディングの資金で「触ってわかる歯の模型(磁石による可動式・8倍大)」を作製し、この度、全国に約70校ある「盲学校」ならびに29の歯科大学・歯学部附属病院の「障害者歯科診療室」などへの無償配布を開始します。

■背景:
通常、歯科医院では「歯の磨き方」や「治療の説明」の際に、患者さんは手鏡を持って自分の口の中を確認します。しかし、視覚に障がいがあるとできません。そこで大阪大学大学院歯学研究科・歯学部附属病院・歯学部附属歯科技工士学校では、視覚に障害を持つ患者さんの口の健康の維持・増進に役立つ「触ってわかる8倍大の歯模型」の製作を発想しました。しかし、模型の製作過程は複雑であるため、歯科医院が通常購入する「患者説明用の歯模型」と比較すると、価格が10倍以上になります。そこで、民間企業に製造販売を持ちかけるのではなく、クラウドファンディングによる資金調達を行い、自分たちで作ることにしました。

■大阪大学クラウドファンディング:
今から約1年半前の2021年11月8日(いい歯の日)~12月24日にかけて、「大阪大学クラウドファンディング」を実施しました。その結果、多くの皆様から計1,000万円以上に及ぶご支援を頂戴しました。その資金を活用して、大阪大学内の「科学機器リノベーション・工作支援センター」に主たる製造を依頼するとともに、歯学研究科・歯学部附属病院と「歯工連携協定」を締結している東大阪市の企業にも協力をお願いし、この度、「大人用(永久歯列)・子ども用(乳歯列)・はえかけの大人の歯(半萌出永久歯)」を1セットにして、100セットの歯模型が完成しました。

■完成した「歯模型」の特徴:
今回作製した模型は:(1)歯の大きさが本物の8倍で、視覚に障がいがあっても触るだけでわかる、(2)歯の裏面に磁石が埋め込まれており、一本一本の歯を自由に配置できるため、ひとりひとりの異なる歯並びを再現できる、という特徴があります。これらの特徴により、視覚に障がいがあっても、自身の手で「歯の磨きにくい場所」を触ることで、効果的な「歯ブラシ指導」が可能となり、また「歯の治療に関する説明」も理解しやすくなります。

■全国に無償配布:
これらの特徴を持つ歯模型(永久歯列・乳歯列・半萌出永久歯)がこの度、100セット完成しました。今春より、全国に約70校ある「盲学校」と、全国29の歯科大学・歯学部附属病院の「障害者歯科診療室」に、「無償配布」を開始します。歯科大学・歯学部附属病院の診療室における使用以外にも、一般の歯科医院に視覚障害のある方が来院される際も、近隣の歯科大学・歯学部附属病院に連絡をしてこの「歯模型」を借り受けて利用することなどが可能ではないかと想像しています。また、大阪大学歯学部附属病院の障害者歯科診療室では、「むし歯予防デー」などに、この模型を用いて視覚障害のある方を対象としたイベントを企画し、「各人に最も適した歯磨きの方法」を誰一人残らず習得してもらえるよう貢献したいと考えています。


本件に関する問い合わせ先
メールにてご連絡いただければ、お話をさせていただきます.またWeb面談も可能です。

大阪大学大学院歯学研究科イノベーティブ・デンティストリー推進センター
教授 十河基文(そごうもとふみ)
TEL:06-6879-2228(留守電あり) E-mail: hamokei_cid@mll.dent.osaka-u.ac.jp